第21期 堀場製作所OB会 総会(2016年11月8日)第3部 堀場社長スピーチ 抄録

 懐かしいお顔を拝見でき、非常にうれしく思います。また、総会の開催おめでとうございます。最近は、外部での講演機会も増えていますが、本日は、今、感じていること、HORIBAが事業として行っていることを中心にお話をさせていただきます。

r_dsc00399
 本日の新聞発表にありましたように、四半期決算の第三期は昨年に比べて減益の結果となっていますが、これは、昨年2015年の業績が非常に良かったということも影響していますが、このHORIBA BIWAKO E-HARBARを含めてHORIBAは現在積極的な投資をしており、その償却費や固定費が増加していることが主な要因です。しかしながらこの投資はタイミングとして非常に良いと考えています。

 「自動車セグメントの状況」
 自動車部門のトピックスとして、昨年、2015年イギリスのMIRA社を買収しました。MIRA社はイギリス政府が第二次世界大戦後に自動車産業活性化のため、自動車研究機関としてスタートさせたものです。4.5Kmのテストコースをはじめ延100Kmに及ぶテストコースの施設を持っています。HORIBAは10年前にドイツのシェンク社のシャーシダイナモ等の研究部門を買収しましたが、当時の副社長がイギリスに戻り、MIRA社の社長となりました。MIRAの売上の80%がイギリス国内だったため、グローバル展開するために以前のシェンク社の縁もあり、HORIBAグループの傘下に入いりたいという申し出がありました。約600名の技術者が従事しており、買収前に訪問した際に技術者と話をし、彼らの技術レベルの高さが印象に残りました。また、HORIBAの文化も良く理解されており、傘下に入れることを決心しました。お金に物を言わせて強引に買収すると、その後失敗することが多いと思うが、文化を理解してもらい、彼らから申し出があると良い関係が構築されていくと思います。結婚と同様にどちらが先にプロポーズ(申入れ)をしたかがキーとなります。20年前の、JY、ABXの時も彼らの方から申し出があり、現在のHORIBAグループとなっています。
MIRA社の技術は、自動運転、電池試験、電磁波試験、クラッシュテストなど多岐に及んでおり、今までのHORIBAにない新しい世界での基礎技術を幅広く手に入れることができました。自動車業界の流れは、自動運転、電気自動車、プラグイン ハイブリッド車で、エミッション分野に加えて、カバーできるようになっています。日本のお客様からもヨーロッパへ進出する際のテスト評価面や信頼性について好評を得ています。
2016年の堀場雅夫賞のテーマ「自動運転技術」も時機を得ており、まるで計画したようにことが運んで行っています。1年前の世の中はバイオ・医用分野を重点的に推進していたが、今は、また、自動車部門が中心になっています。それだけ、自動車に関する市場のすそ野が広くなり、HORIBAもエミッション分野だけでなく、バッテリー、燃料電池分野などの開発機会や自動車産業向けの半導体需要、IOT分野の需要に対応していきます。

「STECの状況」
今年、2016年4月の熊本地震で阿蘇工場は、大きな被害を受けました。建物の損壊に比べ、製品をキャスター付の台に載せていたことで、揺れの影響を吸収し、幸い製品の被害は少なかった。震災の1週間後に現地に行き、熊本県知事、西原村村長にお見舞いに行きました。工場では従業員が自ら被災しているにもかかわらず、日曜日に工場のかたづけに出社していることに非常に感動しました。世界シェア50%を支える背景は彼らのこうした熱い思いによるものだと思います。3,4期工事は基礎がしっかりできており、被害は小さかった。被害の大きかった1,2期分は取壊し、1.7倍の工場建設投資を決意しました。
半導体市場は中国向けに拡大している中、復旧は3カ月では無理だと考えていましたが、クリーンルームの被害が小さかったことにより実際は3週間で復旧させ、供給を再開することができました。この対応の早さには、ユーザーも驚かれたようです。シリコンサイクルには、景気の谷間があるので、阿蘇工場では、医用機器の生産も行っています。STECで年間売上300億円を達成したことを記念して、軽井沢で慰労の旅行を開催しましたが、イベントの企画の中で、震災後の光景が上映され、その日曜日のことが思い出され、非常に感激しました。災害の逆境を信念で乗り越えてきた「こころ」が通じ合い、無から有を生み出す、努力・スピリットが若いホリバリアンに息づいていることを感じて、これに応えるべく工場建設投資を決意しましたし、これが経営としてのメッセージだと考えています。

「投資の話」
びわこ工場E-HARBAR建設は、「技術の伝承」を目的としました。さらに、吉祥院の再整備も進めています。かつて、先輩達の時代は、手作りに近い形で、もの作りがされており、あまりドキュメントを残すこともなく製品が製作されてきました。時代が変わって、現在は様々な意味で直接助言しにくいような空気があります。ものづくりにこだわったHORIBA E-HARBARは、建物も人も「技術の伝承」ができるスピリットがある。おかげさまで、違う業種の会社からも生産の在り方、建物の作り・デザインなど多くの工場見学の依頼が続いています。
現在、従業員数はグローバルで約7,000人となり、うち、海外が62%、日本国内が38%となりました。Ph.D(博士号)を持っている技術者は、海外100人、日本で50人おり、日本に無い技術による製品開発は海外で進めています。
 米国では、テキサス州・アルビンに石油関連の分析・計測をする会社、ネバダ州・リノに、マスフローコントローラーの最新開発を担う会社、ニュージャージー州にはJY社の拠点もあり、いずれも積極的に投資をしています。フランスでは、エコールポリティック研究開発施設を整備し韓国では、SKLの新工場建設が進んでいますし、日本では、吉祥院の再整備も進めています。各地域で働くホリバリアンの士気をあげ、中長期的なニーズに応えるべく製品開発の場や生産拠点を継続して展開しています。
イギリスのMIRA社の投資時は低金利による借り入れにより資金調達が可能でしたが今年から来年にかけて投資がうまくいくかどうかの正念場と考えている。2020年売上2,500億円、営業利益300億円、純利益200億円の中長期計画も可能な数字として見え、現実化してきてました。HORIBAの事業を5分野に広げて、リスク分散、地域重視してきた施策が功を奏していると考えています
OB会のメンバーの皆さんには、今後も成長していく会社を見守っていただきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。

   
以 上

2016年12月5日